一瞬でよみがえる感覚
ふと耳にした音楽で、
一瞬にして昔の景色や感情が
よみがえった経験はありませんか?
学生時代に聴いていた曲、
大切な人と過ごした時間のBGM、
つらかった時、心を支えてくれた音。
音楽は、私たちの記憶と感情、
そして体感覚と
とても深く結びついています。
なぜ音は、これほどまでに
人の奥深くへ届くのでしょうか。
西洋医学的に見る「音楽と記憶」
脳で記憶を司る代表的な部位は海馬、
感情の強さを判断するのが扁桃体です。
音楽を聴くとき、
この2つは同時に活性化します。
メロディーは記憶を、
リズムや音色は感情を刺激し、
出来事と感情をセットで保存します。
そのため音楽は、
「思い出す」というより
当時に戻る感覚を引き起こします。
さらに音は、
言葉よりも速く脳の深部に届き、
理屈を通さずに自律神経へ影響します。
これが「理由は分からないけど涙が出る」
という反応の正体です。
音が“治療”になる理由
音楽は感覚的なものと思われがちですが、
医療やリハビリの現場では
音楽療法として正式に用いられています。
音楽療法では、
・自律神経の調整
・不安や緊張の軽減
・記憶や認知機能への刺激
・感情表現のサポート
などを目的に、
音を「薬のように」使います。
言葉が出にくくなった方でも、
昔の歌なら自然に口ずさめることがあります。
これは音が、
考える脳ではなく
感情や生命リズムの回路に
“直接届く”から。
音は、思い出すためだけでなく、
回復力を引き出す刺激でもあるのです。
東洋医学で見る「音・記憶・心」
東洋医学では、
“心(しん)”が精神や感情を司り、
そこに宿る働きを“神(しん)”と考えます。
音は、この“心”と“神”に
直接届く刺激。
感情が大きく動いた時に聴いた音は、
気・血・神とともに体に刻まれます。
だから音を聴くと、
頭で思い出す前に
胸が詰まったり、
呼吸が変わったりする。
これは「体が覚えている」状態で、
東洋医学では「神が動いた」と表現します。
なぜ音は“魂に届く”のか
「音は魂に届く」という感覚は、
医学的にも説明できます。
音は耳だけでなく、
振動として皮膚・骨・内臓を通じ
全身で受け取られています。
音の情報は、
耳 → 脳幹 → 自律神経 → 思考
という順で処理されます。
脳幹は、
呼吸・心拍・睡眠など
生命維持を司る場所。
ここに直接届く刺激は、
思考では止められません。
特に関係が深いのが迷走神経。
音や振動は迷走神経を刺激し、
・呼吸が深くなる
・心拍が落ち着く
・体の緊張が抜ける
といった反応を起こします。
この状態を、人は
「魂に触れた」「自分に戻った」
と感じるのです。
音は“治す”より“戻す”刺激
音楽療法で重視されるのは、
感情を大きく揺さぶる音ではなく、
・一定のリズム
・安定した周波数
・心拍に近いテンポ
体を本来の状態に戻す音。
音は興奮させるためではなく、
整えるための刺激なのです。
当院で“音”にもこだわっている理由
当院では、
施術だけでなく
空間をつくる音にもこだわっています。
院内で流しているのは、
水の音をベースにした
ヒーリングサウンド。
はっきり主張せず、
聞こえているけれど
自然に聞き流せる音です。
これは、
脳に考えさせないため。
水の音のような一定のリズムは、
脳幹や自律神経に静かに届き、
呼吸や心拍を整えます。
「何も考えなくていい」
「ただ、ここにいていい」
そんな状態をつくるための音。
音は主役ではありませんが、
回復しやすい状態をつくる大切な要素。
当院では、その考え方で音を選んでいます。


